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起業家精神で地域課題の解決に挑む

花形照美氏

東京都千代田区
株式会社リクルートホールディングス エグゼクティブマネジャー
地方創生プロジェクト、財団/ギャラリー担当 花形 照美 氏

株式会社リクルートホールディングス(以下リクルート)は2016年4月、地域課題の解決に向けて新規事業を起こしていくための「地方創生プロジェクト」を立ち上げた。リクルートにはRecruit Ventures(リクルートベンチャーズ)という、全グループ社員から事業提案を募って事業化を支援していく制度があり、今回のプロジェクトでは、この枠組みを使って新たなビジネスモデルを創出するとしている。すでに、高知県と長野県塩尻市をフィールドとして、新規事業の開発・事業化のプロセスが始まっている。

主な取り組み

◎高知県と地方創生をテーマとした業務連携協力の協定を締結
◎長野県塩尻市と地方創生をテーマとした包括連携協定を締結
 など

社会貢献では、地域が稼げるようにならない

――リクルートが地方創生プロジェクトを立ち上げた経緯について教えてください。


花形:地方創生について、リクルートグループはこれまでも幅広い取り組みをしてきました。例えば「じゃらんnet」「じゃらんリサーチセンター(JRC)」は、地方の観光振興に寄与してきたと自負しています。また、東日本大震災のあと、ある社員が被災地に出向して復興計画に関わるなかで、自ら気仙沼のコンテンツを生かした観光ビジネスをしたいということで、一般社団法人を立ち上げて事務局を担っています。彼のところにDMO設立の知見が蓄積され、それがJRCに還流されて、JRCではDMO設立に関するご相談も多く受けています。

 ただ、今これだけ地方創生の流れがあるなかで、リクルートとしても観光振興にとどまらない地域課題解決に取り組んでいきたいということから、このプロジェクトを立ち上げました。リクルートがビジネスを通じて、地方創生に関わっていこうということです。


――ビジネスを通じた地方創生について、もう少し詳しくお願いします。


花形:地域が儲かるビジネスを、地域の皆さんと一緒につくっていくということです。このプロジェクトを立ち上げてから、30近い市町村に行ってお話を聞きました。最初は少し社会貢献に近い考え方だったのですが、地域を回っているうちに、私が社会貢献的に考えていると、いつまでたっても地域の皆さんが稼げるようにならない、ということに気がつきました。「リクルートだから、どうせビジネスの話で来ているのでしょう」と思われる節もあるので、そこもうまく利用して、「そうなんですよ。一緒に儲けることを考えませんか」という立場で、地域の皆さんとお付き合いをすることにしました。


――地域で暮らしている人たちが稼げるような仕事をつくるということですか。


花形:はい。やはり、地域が持続可能であるためには、そこに稼げる仕事が多種多様にある、活躍の場がたくさんあって、面白い大人がたくさんいる、新しいこともできる、だから子どもたちが住み続けたいと思う、そういう地域をつくっていく必要があると考えています。これは「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現」というリクルートの経営理念でもあります。

 ただ、当然ですが、地域の課題解決の主体は地元です。私たち自身はあくまでも黒子であって、実行するのは自治体であり、地元企業であり、住民の方々です。


ミッションは地域課題解決型ビジネスの創出

――地域でビジネスを起こすにあたって、リクルートの強みは何でしょうか。


花形:3つあると考えています。まず、経営管理力と実行力です。リクルートの緻密な目標設定、それをやりきる行動管理、達成意欲を喚起するモチベーション管理は、なかなか地方にない点でもあり、お役に立てるのではないかと思います。次に、ITスキルです。リクルートはラーニングアプリケーション開発の実績に加えてAI(人工知能)の研究所も持っており、ITを使って地域の資源を生かせる仕組みができるのではないかと思います。さらに、リクルートの社員にはビジネス創発力があります。高知県との取り組みでは、Recruit Venturesという新規事業創出の枠組みを使って、事業化を支援していきます。


リクルートベンチャーズスケジュール 「Recruit Ventures」スケジュール(予定)(http://www.recruit.jp/news_data/release/2016/0829_16888.html)

――高知県との取り組みはすでに始まっていますが、社員の方の反応はいかがですか。


花形:結構、盛り上がっています。2016年8月29日のキックオフのイベントには国内のグループ従業員が150名ぐらい、ウェブ視聴も含めると200名ぐらい集まりましたし、9月20日のワークショップにも150名ぐらいの参加者がありました。地域課題を解決するビジネスアイデアを提示して、エントリーしたなかから約20名が11月の高知県フィールドワークに参加──このフィールドワークを通して、ビジネス仮説をブラッシュアップし、肉付けしていきます。

多様性を受け入れる地域は生き残る

――実際に地域を回ってみて、どういう地域なら地方創生の取り組みがうまくいくと思われましたか。


花形:土地柄が閉鎖的ではなく、よそ者、若者を受け入れる風土があることが重要です。例えば、徳島県神山町には、お遍路さんを受け入れてきた文化がありますし、栃木県益子町には古い寺院があって、全国から修行僧が集まってきたという歴史があります。歴史的に見て、全国からさまざまな人が訪れ、いろいろな文化が持ち込まれて、それを受け入れてきた地域、違う人が入ってくることに比較的抵抗のない地域は、地方創生で成功事例になっていることが多いようです。

 正直に言って、人口が減少していくなかで、すべての地域が良くなるのは難しいと考えています。今盛んに地方創生の補助事業が実施されていますが、数年後には、取り組んだことで持続可能性を上げることができた地域と、そうでない地域とに二極化していくのではないかと思います。よそ者を受け入れて、その話を聞こうとする地域は、浮上できる可能性が高いと思います。


――そのような風土のほかに、地域にとって何が重要になりますか。


花形:やはり人材でしょう。まず、自治体の首長にビジョンや経営力があること、それを支えるやる気と実行力のある職員の方がいること、それから地元の企業経営者の関わりも大きな要因です。地方創生という施策は、どうしても国から地方自治体に対して要請されるのですが、実際に稼ぐのは地元企業であり、リスクをとって事業計画を立て人材投資をする地元企業の経営者の皆さんです。一緒に地域を盛り上げよう、町が良くなることに投資してもいいと考えている志のある企業経営者の関わりを引き出せるような自治体は強いと思います。


■ ■ ■


リクルートベンチャーズスケジュール

プロフィール

花形照美氏 

花形 照美(はながた・てるみ)


新卒で株式会社リクルート入社。2年間、求人広告営業を経験後、現・住宅情報事業部門に異動。マーケティング、営業企画、人事等、多くの職種を経験。2009年全社事業開発室に異動。新事業・新組織立ち上げも含め統括業務に従事。2011年よりコーポレート人事・CSRを担当。2013~15年リクルートグループのCSRとダイバーシティ推進を担当。2016年より地方創生プロジェクトを開始。2013年より公益財団法人江副記念財団 評議員。

DATA

組織・団体名    株式会社リクルートホールディングス 地方創生プロジェクト

住所        〒100-6640東京都千代田区丸の内1丁目9-2 グラントウキョウサウスタワー

プロジェクト発足  2016年

Webサイト     http://www.recruit.jp/


連携図(高知県との取り組み)

リクルート連携図

リクルート図.gif

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