1. ホーム
  2. 地方創生実践事例
  3. より多くのプレイヤーを育て、自らも進化中

より多くのプレイヤーを育て、自らも進化中

佐々本博士氏.gif

瀬戸内7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)
株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション
取締役 佐々本 博士 氏

株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションは、2016年4月、瀬戸内7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)における観光産業の振興を目的に、金融機関19社と事業会社27社により設立された。一般社団法人せとうち観光推進機構とともに日本初にして最大の広域連携DMO「せとうちDMO」を形成し、観光関連産業に対する資金・経営支援を担っている。

主な取り組み

◎一般社団法人せとうち観光推進機構とともに「せとうちDMO」を形成する
◎同DMOにおける役割分担としては、せとうち観光推進機構がマーケティングやプロモーション活動を通じて瀬戸内へ人を呼び込む、いわば“需要の創出”を担い、瀬戸内ブランドコーポレーションは、増大した需要に対応する“供給”側の、主に観光関連事業者に対しサービスの質向上、量的な充実といった整備のための資金・経営支援を行う
 など

地方創生は何よりも“人”

――御社は、瀬戸内エリアの地方創生を目指すなかで、どのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか。


佐々本:観光関連産業をはじめ、地方創生を目指す上で重要な役割を果たす事業者に対して資金・経営支援を行うのが「せとうちDMO」における我々の役目です。

 ですから、我々の仕事自体は地域振興に直接結びつくものではないのですが、事業者を支えることを通じてそれに寄与していくことになります。例えば、事業が始まれば、その地域の雇用が拡大し、交流人口も増えます。このようにして地域が発展すれば、定住人口の減少スピードが落ちるかもしれない。壮大な話に聞こえるかもしれませんが、こういう希望を持って取り組んでいます。


――地方創生を目指す上では、どのような人材が必要とお考えですか。


佐々本:当社にとって地方創生とは、まず何よりも“人”です。事業化支援は、各地方で支援すべき人を見つけることから始まります。地元のために何かしたい、地域のためにこんな事業をしたいと考えている方々です。そして、それは必ず、やる気のある人でなければなりません。

 抽象的な精神論じみて聞こえるかもしれませんが、「お金があればやる」といった程度の気構えでは、我々がいくら支援したところで失敗に終わる可能性が高い。自分の気持ちを前面に出して、それが事業計画にきちんと反映されることによって事業は成り立っていくものです。

 言い換えれば、具体的にやりたいことがあり、あとはやる気さえあれば、事業化できる可能性があるのです。我々を含め、今はいろいろな専門家がいます。事業計画を立てる段階からそうした方々と一緒に考えれば実現性も高まります。そして見通しが立てば、また誰かの力を借りながら資金調達を考えればよいわけです。そもそも新事業は、いろいろな人の知識と知恵が結集してこそ生まれるものです。地域の方々には、ぜひ我々と一緒に瀬戸内の振興に取り組んでいただきたいと思います。


プレイヤーを増やすことが大切

――そのようなやる気のある人とは、どのようにしたら出会えますか。


佐々本:最も大切なことは、プレイヤーとなる人を増やすことです。プレイヤーがたくさん集まれば、活発な議論を通して知恵を出し合い、地域おこしの方法も考えていきやすい。「地域のために何かしたい」と考えるプレイヤーをいかに増やし、発掘するかが、実は非常に重要な仕事なのです。

 当社には出向者が10人いて、そのうち6人が瀬戸内の地方銀行の人間です。現在は、各人が出身行の支店ネットワークを生かして、そのようなプレイヤーを探したり、紹介してもらったりしています。当社は2016年4月の設立ですから、まだ知名度も低く、まず我々の存在を知ってもらうために瀬戸内エリアを歩き回っているというのが現状かもしれません。ただ、これを積み上げていくことにより、我々のほうから具体的に「こんな事業をしませんか」とさまざまな提案ができるようになると考えています。


――支援に際し、御社ならではの特色はありますか。


佐々本:当社は「せとうちDMO」の一員ではありますが、あくまでも民間企業です。その利点を生かしたいですね。つまり、経済合理性を考え、必要に応じ特定の事業者に対して集中的に支援ができる。瀬戸内7県全体の観光振興を視野に入れながらも、注ぐべきところに力を注ぐ支援を行っていきたいと思います。

 また、支援の対象は新規事業の立ち上げに限りません。瀬戸内観光の活性化に資するのなら、既存の事業にも──例えば、将来のために設備をリニューアルしておきたいとか、インバウンド獲得のためにホテルを改修したいといった一般的なご相談にも対応しています。これもプレイヤーを増やす1つの方策と言えるでしょう。


支援先との関わりのなかで進化

――社内では、人材育成の取り組みを何かされていますか。


佐々本:設立から日が浅いこともあり、人材育成に関連した特別な取り組みは今のところ特に行っていません。当社は社長以外のスタッフが全員出向者です。まずはそれぞれがこれまでの自分の経験を生かしながら業務に取り組んでいます。そのため全体としては、どこか異業種交流の場に似たところがあり、議論の場が豊富なので、毎日が刺激的です。

 必要な人材像という点では、当たり前の話ですが、何事にも興味・関心を持って他人の話を聞けるという資質が必要と考えます。これは、事業を始めたいと考えている方々と手を携えていく上で必須の能力でもあります。


――資金面以外では、どのようなサービスを提供されていますか。


佐々本:我々は事業に対してだけでなく、いろいろな挑戦に対してサービスを提供していきたいと考えています。例えば、インバウンド受け入れのための多言語化や販路の開拓などの支援です。特に、海外に製品を売りたいという要望は多いです。これについては、我々が提携しているECサイト事業者に地域の事業者をつなぐことから始めたいと考えています。そして、そうしたオプションが新たなビジネスチャンスをもたらすことになれば、とても喜ばしいですね。

 個々の事業者では持てないつながりを、我々が代わりに構築していく。それによって各事業者が悩んでいることを一緒になって解決していく。これも当社の担うべき重要な役割の1つです。

 事業者とお話ししていると、現在の取り組み内容に関連して、手つかずになっている課題が必ず出てきます。そうした手つかずのところに我々が入り、さまざまなつながりをつくる。そこに新たな事業やビジネスチャンスも出てくると思います。地方創生の担い手である方々と一緒に取り組んでいくなかで、我々の仕事とその方法も、少しずつ進化しているのが現在の状況です。


■ ■ ■


プロフィール

佐々本博士氏.gif 

佐々本 博士(ささもと・ひろし)

1967年広島市生まれ。1990年、広島銀行に入行。八丁堀支店、融資第二部、しまなみ債権回収、福山営業本部に勤務後、2016年4月、株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションに出向。取締役。管理部門を中心に全社の取りまとめを務める。

DATA

組織・団体名 株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション

住所 〒730-0011 広島県広島市中区基町10番3号 広島県自治会館2階

設立 2016年4月

Webサイト http://www.setouchi-bc.co.jp/


出資企業および「せとうちDMO」としての関連図

地方銀行 12行
政府系金融機関 1行
信用金庫 6庫
運輸 7社
メーカー 5社
小売 4社
その他 11社



瀬戸内ブランド組織図.gif

他組織との連携図

瀬戸内ブランド体制図_s1.gif

瀬戸内ブランド組織図.gif

この事例に対するレビュー






    タグ

    • 地方創生実践事例
    • ローカルブランディング
    • 観光・DMO
    • 事業創出
    • インバウンド
    • 中国地方
    • 四国地方

    シェアする