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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

善生 憲司さん(ぜんしょう・けんじ)
所属・肩書 サイテックアイ株式会社 顧問
プロフィール 1974年香川県生まれ。
大阪電気通信大学卒業。1999年に高松市で飲食店を開業。東京進出にあたって店の顧客管理システムを検討していたときにFeliCaの技術を使ったポイントサービスを知り、2009年サイテックアイ株式会社を設立。地域ポイント「めぐりん」を事業化し、サービスの仕組みづくり、利用促進、行政との連携事業などに取り組む。


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地域ポイント「めぐりん」で地元をブランディング

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「めぐりん」が地域ポイントに変わるきっかけとなった高松兵庫町商店街

 

加盟店ゼロがターニング・ポイントに

──「めぐりん」は、加盟店でのお買い物だけでなく、ボランティアに参加したり、地元のスポーツチームを応援したりするとポイントがたまりますね。まさに地域に密着した形でポイントサービスを展開されていますが、このような事業を始めた経緯についてお話しいただけますか?

sports.jpg香川県内にある提携先のスポーツチームを応援するとポイントがたまる。ポイント手数料の収益の一部はチームのホームタウン活動に役立てられる

善生:実は、最初は地域貢献というような意識はまったくなくて、単に「お店にポイントサービスを導入しましょう」という感じで事業を立ち上げました。知り合いの店主に声をかけて、共通で使えるお買い物ポイントとして、40~50店舗でスタートしました。ただ、100円のお買い物で1ポイントですから、なかなかポイントがたまりません。やがてお客様にもお店にもメリットが伝わらないまま、1年もたたないうちに加盟店がゼロになってしまいました。

何がいけなかったのかと悩んでいた頃に、たまたま、高松兵庫町商店街から問い合わせをいただきました。そのときは同じ轍は踏みたくないので、地域のなかでの共通のポイントサービスはどういう仕組みにすべきなのか、そしてただのお買い物ポイントではなく、買い物以外の地域の活動でもポイントがたまるような仕組みにしたい、そのような観点から話し合いました。いろいろ話し合うなかで、「商店街のお掃除に来たボランティアの方には300ポイントを差し上げよう」というアイデアが出ました。

──300ポイントというのはとても大きいですね。

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商店街の掃除に参加したり、商店街のイベントなどを手伝ったりすると、1000〜3000ポイント程度のポイントがたまる

善生:はい。お買い物だと3万円分に相当します。商店街では、それまでもお掃除に参加してくれた方にはお茶やジュース、パンなどを配っていました。しかし今度は、飲食物の代わりにポイントを提供するわけです。参加者はそのポイントを使って喫茶店でお茶を飲んだり、クリーニング店を利用したりできますから、商店街の活性化にもつながります。このことが、「めぐりん」が単なるお買い物ポイントから、地域の活性化を推進するポイントに変わる大きなきっかけになりました。

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商店街の掃除に参加したり、商店街のイベントなどを手伝ったりすると、1000〜3000ポイント程度のポイントがたまる

──その後、加盟店の数は増えましたか。

善生:加盟店の数は上がったり下がったりしながら増えていって、現在(2020年6月)は500店舗ぐらいです。「めぐりん」が使えるカードの発行枚数は20万枚以上ですが、そのうち実際に「めぐりん」を使っているユーザーは2~3万人です。

※「めぐりん」は、1枚のICカードで複数のポイントサービスやID管理ができるFeliCaポケットという技術を使い、イオンのご当地WAONカード、香川大学の学生証、高松市役所の職員証、ことでんグループのIruCaカード等に相乗りする形でサービスを提供している。このため、カードの発行枚数に比べてアクティブユーザーの数が少ない。


 

ポイントで元気になる仕組みを考案

──お掃除ポイントのほかに、どのような取り組みをしているのでしょうか。

善生:例えば2012年に、商店街とタイアップして健康ウォーキングを実施しました。このイベントでは参加者に歩数計を貸し出し、3カ月間に歩いた歩数に応じて商店街がポイントを与えました。歩くことで健康になれば医療費も削減できるので、最近は高松市も、つまり行政サイドも取り組むようになっています。また、運動や食事の改善、禁煙などの健康を増進する活動をした従業員に対して企業がポイントを与える健康経営の仕組みをつくりました。現在(2020年5月)、地元企業19社(30拠点)がこの仕組みを導入し、合わせて約1,000名の従業員の方々が健康づくりに取り組んでいます。

たまったポイントは、加盟店でのお買い物のほか、地元のNPO団体に寄付することもできます。また、ポイントをためると自動的に寄付できるような仕組みもつくりました。「めぐりん」ポイントで地元NPOの社会福祉活動を応援したいというユーザーを増やしていきたいと考えています。

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地元企業と提携し、社員が健康づくりの目標を達成したときにポイントがたまる仕組みをつくった。これにより、企業も社員も地元の加盟店も元気にすることができる

──新しいサービスを次々と形にしていますが、その秘訣は何でしょうか?

めぐりん端末.jpg 県内の一部のイオン店舗や高松空港内に設定された「MEGURINステーション」。カードをかざせば、地元のNPO団体に任意のポイント数を寄付できる

善生:アイデアが浮かんだら、まず連携先の方に「こういうサービスはどうだろうか」と話を聞いてもらいます。10人のうち2人ぐらいが「面白い。やってみたい」と答えてくれたら、一度はチャレンジしてみる価値があります。やってみてうまくいかなくても、まだ理解できない人のほうが多いのだから当たり前です。何がいけなかったかを分析して、次はどうすればよいのかを考えます。そのような地味な苦闘をひたすら積み重ねています。

めぐりん端末.jpg 県内の一部のイオン店舗や高松空港内に設定された「MEGURINステーション」。カードをかざせば、地元のNPO団体に任意のポイント数を寄付できる

 

地域ブランドの視点からサービスを考える

──善生さんが地方創生カレッジを受講されたきっかけは、どのようなものでしたか?

善生:地方人材の育成事業に関わっている方に誘われて、2018年に中小企業庁のふるさとプロデューサー育成支援事業の研修に参加しました。そのとき、参加の条件に指定されていた地方創生カレッジのeラーニングを受講しました。「地域活性化のマーケティング」と「地場産業のブランディング」だったと思います。これがカレッジとの出会いでした。

──講座で学んだ知識は、現在の業務にどのように役に立っていますか。

善生:地域ならではの特徴をうまくブランディングしていくことが、地域の活性化につながるということを実感しました。そして、地域ポイントは何をブランディングすべきなのか、様々な視点から考えるヒントをいただきました。

地域ポイントが貢献できることは何かと考えたとき、それはまさしく暮らしのブランディングです。自分たちの日々の生活のなかに「めぐりん」があることで、地元のイメージがアップした、香川に住んでよかったと話してもらえる。そのためには、どういうサービスの仕組みにしたらいいのか。このような地域のブランドという視点から、ポイント事業を考えるようになりました。カレッジを受講してこのような発想や視点を獲得できたと思っています。

──マネジメントや人材育成についての講座も受講されていますね。

善生:当社では人材育成を重視しています。やはり、お客様に一番近いところにいるのは現場に出向く社員です。組織やサービスについて社員の考え方がバラバラでは困りますから、マネジメントや教育指導の手法を学んで社員教育を行っています。

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「めぐりん」事務局では、地元目線で地元のニュースを発掘・紹介するために、『MEGURIN』も発行している

「人と組織のマネジメント」という講座では、経営理念の浸透が重要だと改めて認識しました。当社の経営理念は「ふるさとの愛とありがとうを“かたち”に」です。地元愛や感謝の気持ちって目には見えないですよね。それをサービスという形でどのように表現していくか。難しい課題だと思いますが、同時に張り合いのある仕事です。社員は地元の素晴らしい点を探す努力をしつつ、同時に自分たちが貢献できることは何かと日々探しつづけています。彼らはこの事業を通して、確実に地元愛を育んでいると思います。

また、加盟店の情報や地元の話題などを「めぐりん」の公式サイト(https://megurinsite.com/)やフリーマガジン『MEGURIN』で発信しています。社員も取材に関わっており、地元の魅力を再発見するいい刺激になっています。

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めぐりん事務局では、地元目線で地元のニュースを発掘・紹介するために、『MEGURIN』も発行している

 

「めぐりん」を使って健康的なまちづくり

──「めぐりん」の今後の展開について、どのような展望をおもちですか?

善生:最近は行政との連携事業が増えています。例えば、高松市ポイント(高松市の自治体ポイント)を「めぐりん」のポイントに交換できるシステムをつくって、市役所に端末を設置させていただいています。また高松市は、データ利活用によるスマートシティ構想を推進していますが、その基盤となる共通プラットフォームと「めぐりん」が連携するための仕組みを構築しているところです。

私は健康経営のワーキンググループに属していますが、例えばお遍路道のようなウォーキングコースを仮想で歩けるアプリの実証実験が始まっています。将来的には、プラットフォームに集まってくる健診データやウェアラブル端末のデータ等と「めぐりん」のデータを連携させて、健康管理に役立つ情報を個人にフィードバックできるような仕組みをぜひつくりたいと考えています。

──地元金融機関との連携についてはいかがでしょうか。

善生:先ほどお話したワーキンググループには銀行の方も参加していますので、健康経営への取り組みなどで今後、連携していけるのではないかと思います。

善生憲司さんからひと言アドバイス

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事業を展開するにあたっては、データを正確に扱えることが非常に重要です。僕らのポイント事業は、紙ではなくてデジタルなので、購買データが上がってきます。収集したデータを分析すれば、なぜ加盟店の売り上げが伸びないのか、どこでポイントの利用が滞っているのかなど、いろいろなことを読み取ることができます。原因がわかれば対策も打てるし、改善にもつなげられます。その基礎となるのは、データを正確に分析する力です。
そのために僕がお勧めしたい講座は、「地域経済分析の基礎知識」と「地域経済循環分析と地域経済対策の考え方について」です。この2つの講座では、地域経済循環分析の知識と分析事例を基礎から学ぶことができます。繰り返しになりますが、自分の主観に頼るのではなくて、裏付けとなるデータをしっかりと把握し、正しく分析できることが大事だと思います。

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善生 憲司さん
(ぜんしょう・けんじ)

サイテックアイ株式会社 顧問

[プロフィール]
1974年香川県生まれ。
大阪電気通信大学卒業。1999年に高松市で飲食店を開業。東京進出にあたって店の顧客管理システムを検討していたときにFeliCaの技術を使ったポイントサービスを知り、2009年サイテックアイ株式会社を設立。地域ポイント「めぐりん」を事業化し、サービスの仕組みづくり、利用促進、行政との連携事業などに取り組む。