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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

三井 雅裕さん(みつい・まさひろ)
所属・肩書 大阪狭山市総務部・部長
プロフィール 1968年生まれ。
1992年大阪狭山市役所入庁(土木技師採用)、建設部都市整備室下水道工務課に配属。2009年政策調整室企画グループ参事(地方分権担当)に就任し、南河内広域事務室の立ち上げを担当した。2011年都市整備部次長兼下水道グループ課長、2016年政策調整室次長、2019年防災・防犯推進室長兼総務部理事を経て2019年9月より現職。2008年、自治大学校で約3カ月間の研修も経験した。

地方創生カレッジでの学びにより技術屋から地域プロデューサーにジャンプ

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市を象徴するため池「狭山池」の築造1400年記念イベントは市民協働で行われた

 

市役所職員が一丸となって「市民協働」を推進

──大阪狭山市は、大阪市、堺市など大都市圏のベッドタウンとして位置づけられると思います。そのような地域ならではの課題とは何でしょうか?

三井:人口5万8000人、大阪市内から20分程度という距離に位置する、住環境の豊かな地域というのが私たちの市です。住民の顔が見える規模という特徴を活かして、ここ20年ほど行政が掲げてきたのは、市民が地域活動の主役になり、市と一緒に地域づくりを行う「市民協働」の推進です。

これは関西地域内でも早い段階からの取り組みで、市民と行政の新しい関わり方、付き合い方を探っていくことを、まさに手探りの段階から始めてきました。市のシンボルの一つである日本最古のため池「狭山池」の築造1400年記念イベントや、市内を流れる一級河川 三津屋川の定期清掃活動など、少しずつではあっても、その成果が確実に根づいてきたという実感があります。ただ一方で、時間の経過とともに、活動の担い手の世代交代も考えなければなりません。つまり、後継者の継承という新たな課題が生じてきているのです。

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    「狭山池」築造1400年記念イベントの際に期間限定で池に浮かべられたラバーダック
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    「大阪アドプト・リバー・三津屋川を美しくする会」が中心となり、市民、各種団体、大阪狭山市の協働のもと、2008年から市内を流れる三津屋川の定期清掃活動が行われている

──「市民協働」という大きな目標に向け、行政としてはどのような取り組みが必要で、そのための活動で心がけているのはどのような事柄でしょうか?

総合防災訓練.jpg大阪狭山市では市民協働の防災活動にも力を入れている。写真は、主に防災関係機関、自主防災組織、安全安心推進リーダーの方々が参加して行われた総合防災訓練

三井:市民が起点のまちづくりを進めるため、市内3つの中学校区ごとに2008年から「円卓会議」という仕組みを市民に提示し、市民の皆さんに参加していただきながら、ともに考えていくことを基本として動いています。具体的には円卓会議で企画をまとめてもらい、そこに予算補助をさせていただくというような施策を続けてきました。

行政は住民のためのものですが、だからといって、行政に頼んであとはお任せというのでは、本当の意味での住民のための事業にはなりません。自分たちの住環境は住民自身が参加してこそよいものができる。例えば、住民の生命に関わる防災も、日頃からの地域防災活動がベースとなります。そのためにこそ「市民協働」という発想と活動を根づかせたい。それが私たちの基本的な考え方です。

総合防災訓練.jpg大阪狭山市では市民協働の防災活動にも力を入れている。写真は、主に防災関係機関、自主防災組織、安全安心推進リーダーの方々が参加して行われた総合防災訓練

 

地方創生カレッジとの出会いで大きくジャンプ

──地方創生カレッジは、何を求めて受講されたのでしょうか?

三井:実は私自身、市役所には技師(技術職)で入庁し、2009年に企画部門に異動しました。これが入庁以来初めての異動経験です。これまで17年間在籍していた「下水道」とはまったく畑違いの分野への異動だったので、自分ならではの力の発揮方法を模索してきました。かなり時間は経過しましたが、地方創生カレッジと出会ったのは2016年。三段跳びでいえば、自分なりの模索がホップ・ステップ、地方創生カレッジの受講はジャンプにあたると感じています。

具体的に説明すると、2008年に自治大学校へ研修派遣されたのがホップ。ここで、全国から集まる素晴らしい方々と出会い、かけがえのない絆を深めることができました。次のステップは、2009年から約2年半担当した南河内広域事務室の立ち上げ業務です。この事務室は南河内の3市2町1村が、大阪府から権限移譲された事務の一部を共同で処理するために設置されたもので、当市からは私が派遣されました。技術屋だった私が、住民と直接向かい合う業務のやりがいと難しさを、最初に経験した場所でもあります。そして、その間に自分のなかに芽生えた問題解決の手段──つまり、ジャンプする手段を学ぶものとして地方創生カレッジを選び、講座をいくつも受講したわけです。

──実際の「市民協働」の現場では、地方創生カレッジで得られたものをどのように活用されているのでしょうか?


三井:「大切なのは経験じゃない、発想だよ」──自治大学校や南河内広域事務室で地域ごとの課題に取り組む何人もの仲間たちに出会い、もらったこの言葉が、私が地方創生カレッジにチャレンジする原動力になりました。そこで選んだのが、2008年に自治大学校で紹介されて気になっていた「やねだん」をテーマとする講座「『やねだん』の行政に頼らないむらづくり」でした。住民の方々が「市民協働」を自分たち自身のものと実感し、さらに行動することによって得られる達成感。それをどのようにして見つけるのか。そのための意識を育むもの、気持ちのつなぎ方から実務まで……そんなショーケースのような講座を期待して受講しました。そして想像以上の豊富な内容から、とても多くを学びました。

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極彩色のマンホール蓋は、「狭山池」築造1400年記念の際に市民がデザインしたもの

私が受講した講座はいくつもありますが、基本的にはすべて市民に地域活動の主役になっていただくためのサポート役のノウハウやスキル、そして何よりも柔軟な発想を身につけるためのものでした。また、そのような意識で講座を選びました。私はこれまで、下水整備、公園や二酸化炭素を排出しない街「グリーン水素シティ事業」、危機管理から、文字どおり総務的な仕事までの業務を担当してきましたが、どれも人に動いてもらうことが大きな成果に結びつくものでした。それは住民の方に限らず行政内部でも同じ。そこで、例えば、「狭山池」築造1400年記念の際には、マンホールの蓋のデザインから市民に「下水道」に愛着を感じてもらえるようにするために、これまでのマンホール蓋のデザインであった市の木「さくら」と市の花「つつじ」を狭山池にデザイン化し、日頃意識されることのない下水道事業への理解を深めていただきました。以前知り合いから「手をかけるのではなく、心を離すな」という言葉を贈られたことがありますが、まさにそのためのトレーニングだったとも思います。

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極彩色のマンホール蓋は、「狭山池」築造1400年記念の際に市民がデザインしたもの

──行政では人員のスリム化が進んでいます。お忙しい日々を送られていると思いますが、その合い間に地方創生カレッジを受講していくには、何か秘訣がありますか?

三井:最初からあまりに意識を高く持ちすぎると、負担となることも出てきます。根を詰めず、片足からそっと踏み入れるように気楽に始めるのが大切です。講座は豊富ですから、興味を引かれるものがきっといくつかあるはず。引っかかるものがあれば、まずそれを選んでみることです。一つ受講し始めると、興味はさらに広がります。

ただし、eラーニングだからといって、漫然と受講するのは勧められません。私の場合も、簡単ですが目標設定をしました。一週間に一講座を受講。そこから増えて二講座、三講座というように学びたいものが増えていきました。継続することで後々の発想のヒントにつながります。

 

スピード感のある行政を推進

──三井さんが今後も担っていきたいことについてお聞かせください。

三井:これからの行政サービスには、市民ニーズも多種多様化し、ますますスピード感が求められるようになってきています。したがって、日常業務のなかにあるアナログ的なプロセスを刷新することが重要になってきます。人間が大事なのはもちろんですが、その負荷を減らして何事も効率化できるような仕組みが必要なのです。例えば、大阪狭山市では、この20年ほどで職員を2割ほどスリム化しましたが、大阪府からの事務の権限移譲も受け、単独で事務処理を行うのではなく、広域連携の手法を取り入れ、業務を進めてまいりました。今後は、さらにスピーディーに業務を進められるようにするためにも、ICT技術を活用していきたいと思います。

──今後、地方創生カレッジには、どのようなことを期待されていますか?

三井:行政サイドからいうなら、全国津々浦々、千差万別な課題や取り組みを知ることが非常に大切になります。eラーニングの講座だけでなく、講演などの形で、そのような情報に触れられる機会を設けていただけることを期待します。また行政マンとしての仕事柄、何かを始めることは大切ですが、始めたからには諦めず、続けることが重要になります。そんなモチベーションを見つけるためのヒントが得られるような、楽しく内容の濃い講座の開設を期待しています。

三井雅裕さんからひと言アドバイス

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「市民協働」の世代交代は、住民の方だけでなく、行政の担当者も同じです。今後は若手がその役割を引き継いでいきますが、そのために非常に役立つのが「リーダー経営者を育成する メンタリング講座」だと思います。
行政の役割は住民の皆さんの力を引き出すこと。そのためにはダイレクトに結果を求めるだけではダメで、発想やプロセスを重視するという一手間が大事だという考え方、そのような「気づき」へ若手を誘導していくことが大切です。若手には、仕事の意識づけを習慣化してもらうことが大切だと思いますが、そのためにもモチベーションの持続や成功体験との連携が重要になってきます。小さな成功を重ねることで心のフィルターを増やし、自分が成長しているという実感を持ってもらう。そして、仕事を断る理由を考える前に、まずはどのようにすれば楽しくできるかを考えられるような、前向きに何でも吸収していく柔軟さを獲得するためにも、この講座から学んだことは非常に大きかったと感じています。柔軟な発想力と吸収力を鍛えるためにも、若手にはぜひ勧めたい講座です。

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三井 雅裕さん
(みつい・まさひろ)

大阪狭山市総務部・部長

[プロフィール]
1968年生まれ。
1992年大阪狭山市役所入庁(土木技師採用)、建設部都市整備室下水道工務課に配属。2009年政策調整室企画グループ参事(地方分権担当)に就任し、南河内広域事務室の立ち上げを担当した。2011年都市整備部次長兼下水道グループ課長、2016年政策調整室次長、2019年防災・防犯推進室長兼総務部理事を経て2019年9月より現職。2008年、自治大学校で約3カ月間の研修も経験した。