ホーム全国で活躍する地方創生専門人材-学びと実践の事例-専門人材11:市民協働活動のサポートに従事しつつ後継者を育成
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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

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氏名

伊藤 公昭さん(いとう・きみあき)
所属・肩書 株式会社三十三総研 専務取締役 兼 主席コンサルタント
株式会社三重銀行 地方創生推進室長
国立大学法人三重大学 学長アドバイザー 客員教授 博士(学術)
プロフィール 1984年に三重銀行入行。
1996年現三十三総研設立に参画。以後、上場企業や地域の中堅・中小企業を中心に、企業レベル向上や企業再生に向けたコンサルティングを実施。2003年より、各商工団体主催の創業塾や経営革新塾のメイン講師を務め、起業家の育成に尽力。これまでに支援してきた起業家予備軍は1000名を超え、研修・講演数は年間300本にも及ぶ。2016年から三重銀行と現三十三総研が共同で設置した地方創生推進室の室長として、銀行グループ全体の地方創生に取り組む。

地域を担う企業・人材を育て新たな価値を創出

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「次世代経営者育成塾」では参加者による合宿も行っている。写真は第3回経営実践合宿の様子

 

三重の活性化への取り組み

──長年にわたって地方創生に関わるさまざまな取り組みを続けられていますが、そのうちの中心的なお仕事について教えてください。

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三重県津市の温泉旅館「湯元 榊原舘」では、これまで提供していた会席料理をベースに、鈴鹿医療科学大学 髙木久代教授による監修のもと、“薬食同源”を基本とし、季節の生薬を取り入れた「健美和膳」を提供している
撮影:三浦英絵

伊藤:三重銀行に入行し、金融機関として地元の産業育成に携わるなか、その専門機関としての現三十三総研の設立に参画し、経営コンサルタント・地域プロデュース業務を中心に活動しています。入行を決めたきっかけが「地元のためになることをする」でしたから、その気持ちを追求した結果だといえます。三十三総研での業務の主軸は、企業再生・人材育成と地元産業振興のためのコーディネートです。
世の中の大きな流れである技術革新が距離や時間の差を圧縮し、コロナ感染拡大が拍車をかけました。漫然としていては地方の存在意義や価値が、どんどん希薄化していくのは当然でしょう。でも、私はむしろチャンスと捉えています。しかし、そのためには、地域を担ってくれる企業や人材を育てること、各地域に存在する「地域資源」を磨き直し特徴として活かしつつ付加価値を創出していくことが必要です。
例えば、山と海とに囲まれ、多様な気候や温泉にも恵まれた三重の観光産業に、より一層の魅力を加える薬膳の取り組みも始めました。この地に古くからあった伝統の薬用植物を使って、温泉宿で薬膳料理を提供する試みです。そこから一歩進んで、三重を日本の薬用植物の生産拠点へと育て、ブランド化していこうというプランも出てきています。

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三重県津市の温泉旅館「湯元 榊原舘」では、これまで提供していた会席料理をベースに、鈴鹿医療科学大学 髙木久代教授による監修のもと、“薬食同源”を基本とし、季節の生薬を取り入れた「健美和膳」を提供している
撮影:三浦英絵


──事業承継の取り組みとして手がけられている「次世代経営者育成塾」で、大切にされていることについてお聞かせください。

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2020年9月に行われた「第7期 次世代経営者育成塾」第2回の様子。グループディスカッションでは、企業の存在意義やあるべき姿について話し合った

伊藤:私は常々、経営理念が重要だと言い続けてきました。そこで企業の芯が決まっていき、10年後のあるべき姿を描くことで目標が生まれます。さらにその時には3つのことを念頭に入れてほしいと繰り返し言っています。
3つとは皆さんもよくご存知の「三方よし」、つまり、「相手よし、自分よし、世間よし」という考え方です。WIN-WINという言葉がありますが、私は好んで使いません。なぜならそこに「社会」が入っていないからです。近年、CSRやSDGsなどへの取り組みで認識も変わりつつありますが、私は以前から、企業は社会の中で一定の役割を果たさなければ長く存在することは不可能であるとの思いで仕事をしてきました。そこで必要になってくるのが経営理念。まず注視すべきは、世の中に必要とされる企業であるかどうかです。変化する社会の中で常に求められる企業であり続けられるよう、自社のビジョンを明確に描くことが大切だと思います。
若い経営者に多いのは、目先の仕事ばかり考えてしまうこと。目の前の利益ばかりを見ていては、企業は立ちいかなくなります。経営者は長期の目線と短期の目線を持つ必要があり、価値観を従業員や協力会社と共有すべくベクトルを合わせるための重要な精神的支柱が経営理念なのです。そのベースとなる価値基準が明確になることで企業の存在意義が見えてくる。経営者ががむしゃらに自社の利益を追求しているだけでは、お客さんは当然のことながら、従業員や協力業者からもそっぽを向かれてしまいます。企業には世の中に存在する意義が必要なのです。
その問いを参加者に投げかけ、見つけ出してもらうことを重視しています。育成塾では、経営理念の再構築から研修を始めます。社会がどのように変化しようとも、常に求められる企業であり続けられるよう将来を描き直し、自身が覚悟を持ってイノベーションを起こすべく行動できる、また、従業員や協力会社を大切に考え一緒になって理念実現に向けて行動できる「しなやかな経営者」を育てていきたいというのが願いです。

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2020年9月に行われた「第7期 次世代経営者育成塾」第2回の様子。グループディスカッションでは、企業の存在意義やあるべき姿について話し合った

地方創生カレッジとの出会いとそこから得たもの

──地方創生カレッジとの出会いとはどのようなところにあったのでしょう。受講されての感想はいかがでしたか?

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「『三重県ごま産地化プロジェクト』による地方創生への取組」は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部より“特徴的な取組事例”として表彰された

伊藤:もともと、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」の平成29年度37選に、私たちが関わった九鬼産業さんのごまの産地化が選ばれたのがきっかけでした。平成30年度にも33選に先ほどの薬膳料理を含む温泉地でのONSEN・ガストロノミーコンテンツの企画が選ばれています。その関係で私たちの活動をビデオにまとめることになったのですが、その過程で地方創生カレッジの存在を知り、自分たちの事例だけでなく、全国各地の活動にどんなものがあるかを知りたいと思うようになったのです。「事業性評価に関するケーススタディ」など、いくつかの講座を受講しましたが、そこで学んだことを自分たちの活動にフィードバックして進化させていくという形で活用しました。
地方創生カレッジの講座は、一つ20分程度の動画を複数組み合わせて構成されていて、動画一つごとに区切りがつけられるので、ビジネスパーソンにはいいツールだと思います。私としては、実践事例に数多く触れることができた点が非常に有用でした。私たちの取り組みでも、うまくいくことばかりではありません。しかし、さまざまな事例に触れることで、多くの手法を学ぶことができましたし、こんなやり方もあるんだなと、驚かされることも少なくありませんでした。

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「『三重県ごま産地化プロジェクト』による地方創生への取組」は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部より“特徴的な取組事例”として表彰された

三十三総研での地方創生が目指す方向と実績

──最初の薬用植物から薬膳のお話も含め「六次産業化」が一つのキーワードになっています。

伊藤:三重県は総面積の64%が森林で、耕作地は10%しかありません。しかも、現状では耕作地の1割ほどが放棄されています。農業の担い手の平均年齢は69.5歳(2015)。これでは県土が荒廃していくのは当然のことです。独自では立ち行かない、そんな一次産業へのサポートとして六次産業化が出てきました。
ただし、限界もあります。長期的に見ると、大元の一次産業の衰退は避けられないため、六次産業化だけでは解決策にならないのです。キーワードであることは間違いないとしても、やはり現状の一次産業が独自に立ち行く方策は欠かせないと考えています。


── 一次産業を守り地方を活性化させていくために、人材に次いで欠かせないのは何でしょうか?

伊藤:人材を活かす意味でも、システム変更が大切です。法改正を伴いますが、一次産業の企業化を今にも増して迅速に進めることが重要になってくるでしょう。現制度で言うところの農商工連携などです。例えば、地元企業が一次産業分野に進出しやすく制度の自由度を高めるのです。これにより地元企業の新規事業として一次産業が位置付けられ、既存業務の繁閑の解消、設備や商流の有効活用にも役立つほか、一次産業従事者の収入や保険、社会保障などの充実にもつながります。
より大きな視点では「地域資源」の見直しと磨き直し、さらには新たな結合が必要だと考えています。日本は人口減少や東京一極集中による弊害も明らかとなり、地域の衰退は皆さんご承知のことと思います。以前とは違う、国を豊かにする方策を考えなければならないのです。
観光庁による訪日外国人へのアンケート調査の結果からも明らかですが、彼らは、日本そのものを体験したいと答えています。自然環境はもちろん、文化や祭礼、風習、伝統工芸など、地域にあるそれぞれの誇れるものを有効活用できる仕組みを追求することで、地域の荒廃を防止し発展へと向かう可能性は十分ありえるのです。しかし、地元にいるとなかなかそこに気づきませんし、担い手も圧倒的に足りない。地元大学に通う三重・愛知を第二のふるさととする大学生やUターン学生はそのあたり、よい発想を持っているのではないでしょうか。また、地域金融機関の職員は、大学時代を他の地域で修学した経験を持つ者も多く、就職後はさまざまな業種の経営者と関わりますので、それらを横断的に見られる地方金融機関こそ、気づかれていなかった有用な地域資源を発掘し、活用するためのコーディネートを果たせると思っています。まずは、受け皿となる地元企業の経営者や従業員など最も大切な経営資源である人を育てることに注力したいと考えています。


──地方創生カレッジには今後何を望まれますか?

伊藤:分野や講座数が豊富なのは素晴らしい点ですが、利用する側から見ると、もう少し使いやすく、興味を持った講座に確実にたどり着けるガイドのような機能を希望します。各講座の内容紹介だけでなく、ポイントや概要などを逆引きで検索できるような仕組みはどうでしょうか。
また、多彩な講座からさまざまなことを学べるという利点と比べると、実践事例の数がまだ少ないように感じます。私の使い方からいえば、実践事例紹介はより手厚く、数も増やしていただきたいですね。


伊藤公昭さんからひと言アドバイス

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まったく新しいものをいちから創造するだけがイノベーションではありません。地域の活性化でも、すでにあるものを組み替えたり、比重を変えたりすることで新たな価値が生まれるように、顧客志向を意識した新たなアドバイスができる地域連携事業化コーディネーターが、各分野の専門家の方と協力しあうことで地域の魅力は高まります。「地域プロデューサーの地域への関わり」講座などが参考になりますが、事業を行う方と比べると、そのような裏方の仕事がわかるコーディネーターが不足しているようです。
もちろん、裏方に徹する美学を持ったコーディネーター精神が必要です。スキルとしては、経営についての見識やマクロ環境の変化や顧客志向の変化についての関心がある人材でないと困ります。ただそれ以上に、地方創生を誰かに任せるのではなく、自分がやってやるという強い気持ちが重要です。それは最初に話した「三方よし」にもつながる部分だと思いますし、地方創生カレッジの講座をある程度受講していくなかで、自然とそのような感覚が身についていくように思います。

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伊藤 公昭さん
(いとう・きみあき)

株式会社三十三総研 専務取締役 兼 主席コンサルタント
株式会社三重銀行 地方創生推進室長
国立大学法人三重大学 学長アドバイザー 客員教授 博士(学術)

[プロフィール]
1984年に三重銀行入行。
1996年現三十三総研設立に参画。以後、上場企業や地域の中堅・中小企業を中心に、企業レベル向上や企業再生に向けたコンサルティングを実施。2003年より、各商工団体主催の創業塾や経営革新塾のメイン講師を務め、起業家の育成に尽力。これまでに支援してきた起業家予備軍は1000名を超え、研修・講演数は年間300本にも及ぶ。2016年から三重銀行と現三十三総研が共同で設置した地方創生推進室の室長として、銀行グループ全体の地方創生に取り組む。