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住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

住民組織の強化から始まる歴史的まちづくり

板垣さんプロフィール写真.jpg


氏名

板垣 信行さん

(いたがき・のぶゆき)

所属

株式会社博報堂プロダクツ

事業企画室地方創生事業推進部

シニア・エグゼクティブ・プロデューサー

プロフィール 宮城県仙台市生まれ。1984年に早稲田大学商学部を卒業後、団体職員を経て1996年博報堂グループ会社へ。マーケティング、プロモーション企画設計業務に就く。2009年(株)博報堂プロダクツに転籍。プロモーションプランニング部部長、店頭プロモーション事業本部長を経て2014年九州支社長に就任。民間企業のブランディング業務に従事。2019年執行役員(兼九州支社長)就任。地方自治体の課題解決・ブランディングのための事業立案、実施業務を行う。2022年社会構想大学院大学地域プロジェクトマネージャー養成課程修了。2023年3月役職定年後より現職。

ブランディングのビジネス経験を活かした地方創生を推進

 

疲弊している自治体に手を差し伸べることは日本のためになる

──板垣さんが地方と関わるようになった経緯を教えてください。

板垣:2014年に九州支社長に着任して、西日本に本社を置く民間企業を中心にブランディング業務をお手伝いしてきました。「ブランディング」は、簡単に言うと「好きになってもらうための活動」です。それが責任者として仕事で地方と関わった始まりです。ただ、思い起こすと若い頃から広島、松山、大阪…など、大都市から地方まで日本各地への転勤を経験してきました。そのなかで地方への思いや危機感を潜在的に持つようになっていたのかもしれません。 本格的な関わりは、2019年に執行役員に就任してからです。そこから地方自治体の課題解決にシフトしたのは、2020年の新型コロナウィルスの流行がきっかけです。民間企業がバタバタと営業中止に追い込まれ市場が動かなくなったのと相反して、ワクチン接種、マイナンバーカードの普及促進、持続化給付金などの給付作業で自治体はものすごく忙しそうで、そちらのお手伝いに力を注ぐことにしました。博報堂プロダクツはプロモーション専門会社ですから、大きな会場の運営は慣れています。そうした大きな仕事もありましたが、段々と「本当に困っているのは予算がつきづらい小さな自治体さんじゃないか?」と思い始めました。そこで九州を中心に、人口5万人以下の150ほどの自治体に「お困りのことはありませんか?」と相談を持ち掛け、70ぐらいの自治体とオンラインで面談をしました。


──行動が迅速ですね。自治体の現状はいかがでしたか?

板垣:やはり皆さん困っていました。現在は西日本を中心に官民連携による地域課題解決や、町のブランディングに携わっています。3つの自治体とは包括連携協定を結んでまちづくりのお手伝いをしています。大げさだと言われるかもしれませんが、疲弊している自治体に手を差し伸べることは日本のためになる、という思いを強くしたし、現在もその思いでやっています。


──マーケティングやブランディングの経験と知見が、地方で花開いたかのようです。

板垣:私の役目は地域での民間企業と自治体のブリッジ役だと思っているんです。2022年に社会構想大学院大学で学んだのも、地方のことをもっと勉強して地域プロジェクトマネージャーとしての知識とスキルを身につけたかったからです。


阿久根市との間で『地域活性化包括連携協定』を結び、地方創生の支援に取り組んでいる(板垣さんは写真中央).jpg

3つの自治体と包括連携協定を結んで地方創生の支援に取り組んでいる(写真は阿久根市との『地域活性化包括連携協定』調印式の様子。板垣さんは写真中央)


地方創生人材を育てる「種まき」をしていきたい

──地方創生カレッジでも多くの講座を受講いただいています。地方創生カレッジを知ったきっかけは?

板垣:2019年に地方創生に取り組み始めてから、地方創生に関わるさまざまな事業体のメールマガジンなどを読んでいました。まだまだどん欲に勉強したい思いがあって学びの場を探していたところ、「地方創生」とウェブ検索をして見つけました。講座のラインナップを見ると種類が非常に多く、しかも勉強したいタイトルばかりが並んでいて、かつ無料ということに驚きました。大学の先生方が話す専門的で学術的な講座にくわえて、地方創生の実践者の方の経験に基づく講座もあって、実務者としてはとても参考になりました。基礎的な講座から事例を紹介する講座まで揃っていてバランスがよく、地方創生で何をしなければいけないのかがわかります。周りの社員にも受けさせたいなと思って、社内で地方創生カレッジの情報を共有しました。


──地方創生事業推進部を立ち上げ、地方創生に関する事業にますます力を入れています。eラーニング講座はどのように役立ちましたか?

板垣:地方創生のために解決しなければならない課題は地域によって様々ですが、共通しているテーマは人口減少の抑制だと思います。受講した講座のなかでは『「地方消滅」の真相と「地方創生」のあり方』が印象に残っています。講座で紹介された人口の波のグラフは衝撃でした。幼少期、生産年齢期、老齢期にいたる人口の動きが波のように動いていて、講師の方の「日本が人口の津波に押しつぶされる!」というような鬼気迫る語り口調によって、なんとかしなければという気持ちを芽生えさせる演出が素晴らしかった。よくできていました。講座を受講したことによって「地方創生の根源的な目的は人口減少をゆるやかにすること」という根幹の考えがバシッと自分の中に入ってきました。 私は以前から課題解決には一つ一つフローのように考えることが重要だと考えていました。人口減少の抑制であれば、最も大事なのは交流人口や関係人口を高めること→交流人口や関係人口を増やす手立てとしてまずは観光振興が必要→観光客を増やすには地域の魅力を高めなければいけない…というように。地方創生カレッジには地方創生に求められるそれぞれのフローに適合した講座が網羅的に用意されていました。


eラーニング講座No.124『「地方消滅」の真相と「地方創生」のあり方』.png

板垣さんが受講したeラーニング講座 No.124『「地方消滅」の真相と「地方創生」のあり方』では過去から将来に至るまでの人口の年代構成の変化をわかりやすく紹介している。


──受講者の一人として、地方創生カレッジは地域のどのような方が受講したらといいと思われますか。

板垣:例えば「スマート農業」についてなら、役場の財政課課長さんや農業振興課の職員さんなど、それぞれの専門セクションにいる人たちがご覧になるといいですよね。農家さんが観ることも意識改革にはつながると思いますが、かじ取り役が正しい知識と最新情報を得ることで、正しい方向に導くことができる。質のよい施策を出せば5年後に発展するという実感を持てるはず。とても役立つと思います。


──「学生が主役の地方創生プロジェクト」の発表会にもオンラインで参加いただきました。学生たちの地方創生への思いはいかがでしたか。

板垣:法政大学とのプロジェクトでは白馬村や小谷村をよくするために東京から現地を訪れてフィールドワークを行ったことに感銘を受けました。eラーニング講座の制作だけでなく、学生を巻き込んで地方創生人材の育成に寄与しているという事業のバイタリティーに感心しました。私たちは、ある一定の地域に深く入り込んで、問題を解決できるまで徹底的に取り組むという姿勢を大事にしていますが、「学生が主役の地方創生プロジェクト」は地域に「種をまいている」という感じですね。地方創生への必要性を感じ「ジブンゴト」にする種を若い人たちの心にまいて、発芽を見届け、また次の場所で種をまくような活動をしているという印象です。非常に大切なことだと思います。 秋田県立大学とのプロジェクトでは学生さんが「一度地元を離れても、いつか必ず帰ってきて自らの手で生まれ育った秋田を盛り上げる」とおっしゃってましたね。偉いですね。ぜひこれからも全国で種まきをしてほしいです。また、私たちも地方創生カレッジと一緒に何かできるんじゃないかと、そんな気もしました。


──今後もeラーニング講座と実地の学習を掛け合わせた企画を実施する予定です。

板垣:そういった企画と、私たちがやっている地方創生の活動を掛け合わせるといいものになりそうです。私たちも今後は人材育成に取り組んでいきたいと思っています。地方在住の皆さん、特に若い方の、わが町をなんとかしたいというモチベーションを上げていかなければならないと考えています。


現地に入って住民といっしょに考える。
そのプロセスが何より大事

──博報堂プロダクツは現在3つの自治体と包括連携協定を結んでいるということですが、こうした自治体との取り組みを教えてください。

板垣:自治体との包括連携協定は2021年10月に徳島県那賀町と初めて結びました。その後、熊本県氷川町、鹿児島県阿久根市と続いています。自治体ではワークショップを開き、人口減少を食い止めるための施策を役場の職員と住民の皆さんで一緒に考える取り組みを行っています。参加者の皆さんには私から「どう思います? どんなことが考えられます?」と投げかけて皆さん自身で考えてもらうことを大切にしています。ヒントは出しますが、私の頭の引き出しの中からアイデアを引っ張り出すことはしません。皆さんから方法が導き出されたら、現実性や魅力をちょっと足しながら予算を組むお手伝いをしています。


──共に考え、思いを引き出す、ということですね。

板垣:はい。那賀町では、高校の魅力化、自動運転の実証実験、観光資源の再活性化、旅館の魅力の復活などが具体的に進んでいますが、どれも住民から生まれた発想です。例えば高校の魅力化は、中学から地元の高校に進学する人が30%しかいないという話から始まりました。高校の段階で70%も出ていくなんて恐ろしい話です。流出をそこで止めないと、若い世代の人口減少を止められないだろうと気づく。まさに「ジブンゴト化」です。人口減少が止まらないと嘆いているだけでなく、知恵を出し合って具体策を考えてこうしようというプロセスがとても大事。那賀町も氷川町も阿久根市も、役場の職員の皆さんに「もしかしたら自分たちで町を変えられるかもしれない」という気持ちの変化が見られます。


那賀町『みらい創造プロジェクト会議』で説明を行う板垣さん.jpeg

那賀町の『みらい創造プロジェクト会議』で参加者に説明を行う板垣さん


地方創生はみんなで喜べるところが魅力。
ジブンゴトのまちづくりをお手伝いしていきたい

──施策そのものの提案はせず、プロセスを重視しているのですね。

板垣:そうです。施策を検討するプロセスそれ自体が大きな内発的な動機づけとなります。時間をかけて参加者みんなで意見を出し合うことで、これまででは考えられなかったイノベーション企業の参入に関する予算化を実現させました。住民は職員の企画力と行動力を見直し、予算が通れば大喜びする。「ついていくよ」と、地域に一体感が生まれています。自分たちが考えたことが形になれば自信がつきます。 地方創生は、みんなで喜べるところが魅力ですね。取り組みの成果が出るのはもう少し先ですが、ここまでのプロセスもちゃんと楽しんでいるし、期待感を持って前向きになっている。「うちの町に来ることなんか薦められない」と言っていた人が、「薦めたい」に変わる。これが地方創生の第一歩だし、原点なのではないでしょうか。町長も「こんな光景は考えられなかった」と話しています。地域が変わっていく手ごたえを感じています。


──官民連携のブリッジ役として、人口減少を抑止する。地方創生は板垣さんにとって大きなテーマになっていることがよくわかりました。

板垣:これまではブランドや売り場を「好き」になってもらって収益を上げることを仕事にしてきました。40年あまりのキャリアで築いたネットワークも駆使して、専門家の力を借りつつ、「我が町を救うのは自分たち」という気持ちになっていただけるように、これからもお手伝いをし続けたいと思っています。


板垣さんプロフィール写真.jpg

板垣 信行さん
(いたがき・のぶゆき)

株式会社博報堂プロダクツ 事業企画室地方創生事業推進部シニア・エグゼクティブ・プロデューサー

[プロフィール]
宮城県仙台市生まれ。1984年に早稲田大学商学部を卒業後、団体職員を経て1996年博報堂グループ会社へ。マーケティング、プロモーション企画設計業務に就く。2009年(株)博報堂プロダクツに転籍。プロモーションプランニング部部長、店頭プロモーション事業本部長を経て2014年九州支社長に就任。民間企業のブランディング業務に従事。2019年執行役員(兼九州支社長)就任。地方自治体の課題解決・ブランディングのための事業立案、実施業務を行う。2022年社会構想大学院大学地域プロジェクトマネージャー養成課程修了。2023年3月役職定年後より現職。

主な受講分野