肥沃な大地と水資源に恵まれ、一大消費地の一都三県から近く交通網が整っている北関東は農業が盛んで生産量全国一の農産物がたくさんあります。茨城県はハクサイ、レンコン、ピーマン、メロンなどが全国一位(2018年)。1968年からイチゴ生産量全国一位を維持している栃木県は、さらなるイチゴの発展を目指し全国初の「いちご研究所」を開設。山梨県は果物の生産が盛んで、ブドウ、モモ、スモモの生産量が日本一です(2018年)。キャベツ産地として名高い嬬恋村がある群馬県は、常にキャベツ生産量上位に入ります。長野県はエノキタケ生産量全国一で、全国の約半分を生産しています。栃木県には世界遺産「日光の社寺」、群馬県には旅行会社社員などが決める「にっぽんの温泉100選」で16年連続1位の草津温泉、長野県にはリゾート地である軽井沢があるなど、世界的にも知られる観光地が北関東には数多くあります。

あんこう料理

 茨城県沖ではあんこう漁が盛んで、あんこう鍋、あん肝、どぶ汁、唐揚げ、供酢和えなど様々な形の料理が存在します。
 あんこうの身、肝、胃、卵巣、皮、ひれ、えらの部位は「あんこうの七つ道具」と呼ばれ、骨以外はすべて食べることができ、部位により様々な食感を楽しめます。表面がすべりやすく、身が大きいため、まな板でさばきづらいあんこうは、つるして回しながらさばく「つるし切り」で調理されます。
 現在も肌寒い季節となると、魚屋や飲食店にあんこうが並び、様々な調理法によって楽しまれています。

そぼろ納豆

 納豆と切り干し大根をあわせて、しょうゆなどに漬けこんだ水戸の伝統的な惣菜。
 江戸時代、台風が来る前に収穫できる早生(わせ)大豆作りが水戸で進められました。早く収穫される小粒の大豆でもおいしく食す工夫として、納豆作りが盛んになりました。水戸の納豆が全国的に有名になったのは明治以降、鉄道(水戸線)の開通に伴い土産品として売られたのがきっかけです。
 現在ではご飯のお供として、お茶漬けの具に、お酒の肴としてなどいろいろな方法で食べられている水戸の伝統的なおかずです。

しもつかれ

 サケの頭、煎った大豆、鬼おろしでおろしたダイコンとニンジン、油揚げなどの材料を鍋で煮込み、酒粕を手でちぎり入れ、最後に味を調えて作られる料理です。
 栄養豊富な保存食として、初午(2月最初の午の日)につくったしもつかれは、稲荷神社に赤飯と共に供えられ、無病息災を祈ることでも知られている行事食となります。発祥は定かではありませんが、鎌倉初期から作られていたとも伝わります。
 無病息災を祈願し「七軒の家のしもつかれを食べると病気にならない」という言い伝えがのこります。現在でも栃木県の飲食店や各家庭で作られています。

ちたけそば

 「ちたけ(乳茸)」の名称は、ちたけを裂くと乳白色の汁が出ることに由来します。梅雨明け頃、農作業で山や畑に行くと雑木林の中にちたけが自生しており、味と香りがとても良かったことから麺類の出汁として使われるようになりました。ちたけとナスを炒め、出汁を加えてしょうゆ、みりんなどで味を調えたちたけ汁を、そばにかけて食す郷土料理です。
 ちたけの旬となる夏には地元の人たちがこぞってちたけを採りに山林に分け入るほど人気の食材。県内のうどん屋やそば屋などでもメニューに取り入れられています。

おっきりこみ

 幅広の生麺、サトイモ、ダイコン、キノコなどをたっぷりの汁で煮込んだ料理です。塩を入れずに打った生麺を煮込むため、打ち粉が溶け出して出汁にとろみが出るのが特徴のひとつ。
 麺を「切っては入れ、切っては入れ」する様子から、自然とこの呼び名がついたといわれています。地域によっては「煮ぼうと」や「煮ぼうとう」、「おきりこみ」とも呼ばれています。昔、養蚕農家で農作業を終えた際に、栄養バランスに優れ手早く大量に作れる料理として作り始めたのが発祥と伝わっています。
 今では家庭でもよく作られており、ふるさとの味として愛されています。

生芋こんにゃく料理

 生のこんにゃく芋をすりおろして作る、こんにゃく料理の総称です。生のこんにゃく芋をすりおろして作ることで、こんにゃく本来の弾力と風味のよさを引き出すことが出来ます。
 群馬県の日照時間の長さと水はけのいい土壌がこんにゃく芋の栽培に適していることから、全国生産量の約9割が群馬県で生産されています。
 おでんや刺身、煮物、鍋など様々なこんにゃく料理が楽しまれており、現在でも新たなこんにゃく料理の開発が行われています。低カロリー食品、美容食品としても注目されています。

ほうとう

 幅広の平打ちうどんとカボチャに加え、ネギやシイタケなどを味噌ベースの汁で煮込んだ麺料理です。うどんを生麺の状態から煮込むことで、汁にとろみがついて冷めにくい特徴があります。
 山梨県の山間部では、米作りが難しいことから麦を栽培し、収穫した麦で麺を作り、季節の野菜と煮込み始めたのがほうとうのはじまりです。戦国時代、武田信玄が貴重な米に代わる陣中食として考案したという説が伝わります。
 県内では、「武田陣中ほうとう祭り」や「昇仙峡ほうとう味くらべ真剣勝負」など、ほうとうに関するイベントが開催され好評を得ています。山梨県の家庭では、残った汁を翌朝ご飯にかけて「ほうとう飯」として食べられることもあります。

吉田うどん

 硬く非常にコシが強い麺を、味噌かしょうゆ等で味付けしたつゆに、ニンジン、キャベツ、ゴボウ、油揚げ、馬肉などを具として食す吉田うどん。
 吉田市近郊では、気候的、風土的に稲作が難しく雑穀栽培とともに水掛麦と呼ばれる農法で麦が栽培されてきました。そのため日常的には野菜を多く使ったほうとうを、祭りなどのハレの日には麦を多く使ったうどんが食べられていたようです。
 現在も、富士吉田市内に60軒以上のうどん屋が存在し、多くの観光客が訪れています。

信州そば

 そば粉と小麦粉を混ぜ、水を加えて、水回し(水をまんべんなくいきわたらせる)、こね、のばし、切りという工程を経て作るそば。そば粉が40%以上使われているもののみが、信州そばを名乗る事が出来ます。
 そば作りの歴史は古く、江戸時代に広まったといわれています。そば作りには涼しい気候が適しています。そして、昼夜の温度差が大きいと、栄養がソバの実に運ばれやすくなることで、甘いデンプン質が作られます。この二つの条件を満たす信州は、昔からそばの名産地として知られていました。
 長野県では各地でそば祭りが開かれており、その中でも松本そば祭りは多くの来場者を毎年迎え、好評を博しています。

おやき

 野菜や山菜など旬の食材を炒めて味噌やしょうゆで味を調え、小麦粉を練ったもので包み、焼いたり、蒸したりして作られます。
 山に囲まれ雪の多い信州では、稲作の収穫量が伸びず、お米の代用品としてそばや小麦が栽培されていました。古くは縄文時代より粉もの料理が盛んで、いろりや灰の中で粉を練って焼いた跡が発見されたといわれています。
 その長い歴史から、家庭におけるバリエーションは千差万別。朝食に子供のおやつに、お酒のつまみとして、調理法も焼き、蒸かし、揚げと様々です。現在も年中行事に欠かせないごちそうとして愛されています。