第二の経済圏である近畿地方。滋賀県には日本一大きい湖の琵琶湖があり、冬になると鴨が訪れます。鴨猟が解禁される11月から3月、長浜の旅館や飲食店では脂がのった鴨で作る鴨鍋を食べることができます。古くから都として栄えた京都府には各地から様々な野菜が運ばれました。その中から環境に合った野菜が改良され定着、京の伝統野菜として有名になりました。世界文化遺産「古都京都の文化財」など人気の観光地があります。世界遺産「古都奈良の文化財」がある奈良県は県と民間による食の魅力発信を行っています。梅干し生産量一位の和歌山県(2018年)には世界遺産に認定された「熊野古道」があります。食い倒れの街として有名な大阪府では、2025年に「大阪・関西万博」が開催されます。兵庫県には世界的に有名な神戸ビーフ、正月のおせち料理で重宝される黒豆「丹波黒」が食材として人気です。

ふなずし

 琵琶湖でとれるフナ(主に卵を持ったニゴロブナのメスを使うのが一般的)を塩漬けにし、ごはんと交互に重ね、数カ月間から約2年間漬けこんで、発酵させて作ります。酢を使わずに、発酵させて作る寿司を「なれ寿司」といい、現在の寿司の原型といわれています。  一般的にはフナのみを食べますが、地元の食し方としてペースト状となったご飯ごと食す方法も存在します。発酵食品であるために独特の匂いを発しますが、熱狂的な愛好家も多数存在します。
 近年では原料となるニゴロブナの漁獲高が減っているため、その対策がすすめられています。

鴨鍋

 冬の訪れとともに琵琶湖に飛来してくるマガモを豆腐やネギなどの野菜と一緒に煮込んで食す鍋料理です。寒い冬を乗り切るために、マガモには脂が多くのり、身の甘さと歯ごたえが特徴。「鴨が葱を背負ってくる」ということわざの通り、カモとネギの相性は抜群。天下人の豊臣秀吉が鴨鍋を好み、カモの飼育を行うよう推奨したという説が残っています。
 元々は漁業の網にかかったカモのみを食していましたが、現在は冬季に限り猟が許されており、11月から3月にかけて脂がのった鴨料理を食べることができます。

京漬物

 野菜本来のうまみを活かした、うす塩の味付けで作られるお漬け物。千枚漬、すぐき漬、しば漬などがあります。
 京都府は栄養を多く含んだ土壌と良質な水に恵まれており、野菜栽培に適しています。おいしい野菜が作れるようになると、それを長期保存するための漬物作りの技術が発達しました。
 香り豊かで鮮やかな色合い、うす塩の上品な味の京漬物は、世界に誇る名産品です。

賀茂なすの田楽

 賀茂なすを半分に切ってから油でじっくりと焼き、甘味噌と一緒に皮ごと食す料理。きめ細かな身が詰まっていることから歯ごたえがよく、果物のようにみずみすしいのが特徴です。
 賀茂なすは京都の夏を代表する夏野菜です。約100年前、上賀茂(かみがも)地域と西賀茂(にしがも)地域で作られていたことから、その名が付いたと伝わります。
 現在は初夏から食卓にあがる風物詩であり、7月の祇園祭の時期になると料亭でよく提供されます。

柿の葉寿司

 ひと口大の酢飯にサバや鮭、小鯛などの切り身をのせ、防腐効果の高い柿の葉で包む押し寿司です。
 江戸時代、保存がきかないサバなどの魚は、塩でしめられた状態で奈良県に届きました。届いたサバをにぎり飯にのせて、柿の葉にくるみ、重石をのせて作ったのがはじまりとされます。魚と米が貴重な当時の吉野では特別な料理とされ、お祭りやお祝い事の際に客人にふるまわれました。
 現在では、奈良県の主要駅で駅弁として売られています。

三輪そうめん

 冬は温かいにゅうめんで、夏は季節の具をのせて冷やし素麺で。奈良県大和地方では一年中食されています。特徴である細くこしの強い食感は、良質な小麦と水、熟練の製麺技術によって可能となります。
 今から1,300年以上前、小麦の栽培が盛んな三輪地域で作り始めたのが起源と伝わります。江戸時代に「大和三輪素麺、名物なり、細きこと糸のごとく、白きこと雪のごとし」と伊勢参りにきた人々の間で評判となり、全国的に有名になりました。
 冬は気温が低く、山から吹き下ろす冷たい風がそうめんの乾燥に適しています。冬にそうめんを干す風景は、三輪地方の風物詩です。

鯨の竜田揚げ

 ひと口大に切った鯨肉に下味をつけ、片栗粉をまぶして油で揚げる料理です。
 戦後のタンパク源として日本の食卓を支えた鯨料理の代表的な一品です。日本における本格的な捕鯨の起源は、江戸時代の和歌山県太地町(たいじちょう)とされますが、奈良時代の文献に鯨肉贈答の記述があることから、鯨を食べる習慣はより古くからあったといわれています。
 現在でも「鯨の竜田揚げ」が学校給食で出されるなど、鯨食文化は受け継がれています。

めはりずし

 味付けした高菜の葉でごはんを包んだもの。熊野地方で栽培が盛んな高菜を用いて作り始めたのが起源とされています。昔は、山仕事や畑仕事の合間に食べる弁当として、どの家庭でも作られていました。名の由来は、「目を見張るほど大きな口を開けて食べる」、あるいは「目を見張るほどおいしい」ということから名付けられたなど諸説あります。
 当時は手短に食べ終えられるように大きく作られていましたが、今では食べやすいように小さいサイズで作られています。お土産や駅弁としても有名で、各地の百貨店における物産展で取り扱われることもあります。

箱寿司

 木製の型にエビや魚の切り身と酢飯を重ねて詰め、押して四角い形に整える寿司。大阪寿司とも呼ばれます。
 明治時代に、サバやアジなどを材料にした押し寿司が普及し、その派生料理として日常のもてなしを目的にタイやエビ、アナゴなどの高級食材を用いた「箱寿司」が考案されました。押し型を作る職人と寿司職人の技が織り成す「箱寿司」は大変人気を呼び、もてなし料理の定番となりました。
 仕込みにかかる手間から提供店は減りつつありますが、今もなお伝統技術と味は引き継がれています。

白みそ雑煮

 大阪に伝わる伝統的なお雑煮です。白味噌汁に丸もちを入れ、綺麗に形を切り整えた大根、ニンジン、サトイモなどを加えたもの。
 正月に食されることが多く、時期になると雑煮用に作られた雑煮大根や金時人参などが販売店に出回ります。具材の形を丁寧に整えるのは「角が立たないよう、丸くする」と縁起をかついだ為です。
 現在は元旦のお祝いにはもちろん、大阪府の食文化の継承と食育活動を目的として、雑煮づくりの体験教室を行う小学校もあります。

ぼたん鍋

 兵庫県丹波篠山(ささやま)地方は冬を迎えると猪の狩猟が盛んに行われます。夜明けになると猟師達が山を巡り、その日に仕留めた獲物を町に持ち帰ります。猪肉(ししにく)食文化のなかで代表的な料理がぼたん鍋です。
 大皿に猪肉を盛り付けた様子が、牡丹の花を思わせることからその名が付いたといわれています。薄切りの猪肉をハクサイやニンジン、ゴボウ、キノコなどと煮込んで食します。
 もとは明治期の軍隊食、味噌仕立ての猪鍋がルーツとされます。現在、篠山市には数多くの専門店が存在します。

いかなごのくぎ煮

 毎年2月末から約1カ月間行われる、春の訪れを知らせる「いかなご新子(しんこ)漁」。漁でとれた体長2~4cmの新子(幼魚)をしょうゆや砂糖、みりん、ショウガで甘辛く味付けした郷土料理です。
 完成品が古釘に似ていることから「くぎ煮」と名づけられたといわれています。発祥は諸説あり、鮮魚店がお客様の要望により作り始めたという説や、神戸の網元が従業員に食べさせたのがはじまりという説があります。
 いかなご新子漁が終わる3月にはスーパーにところ狭しと積み上げられます。この時期には、各家庭でいかなごを炊く光景がよくみられます。土産物店での取り扱いもあり、人気の品です。