ホーム日本全国 地域の宝 郷土食×地方創生農山漁村の郷土料理百選中国

 日本海に面する山陰地方と瀬戸内海に面する山陽地方に分けることが出来る中国地方。日本一広大な砂丘がある鳥取県には「かに汁」や「ハタハタ寿司」などの海の幸を活かした郷土料理が数多く伝わります。本殿が国宝に指定される出雲大社、シジミ漁で知られる宍道湖がある島根県では「しじみ汁」や「しじみの酒蒸し」などの料理が人気を集めています。岡山県は温暖な気候をいかした農業が盛んで中国地方最大の米どころとして、モモやブドウの産地として有名です。カキの生産地として有名な広島県には世界遺産に選ばれた嚴島神社があり、観光客の多くが宮島名物「あなご飯」を食べることで有名です。フグ禁食令が出ていた明治時代、総理大臣の伊藤博文が下関でフグの美味しさに感動し山口県のみで禁食令が解かれたことから、下関を中心にフグ食文化が全国に拡がりました。

かに汁

 冬の味覚の王様、カニをぜいたくに用いたみそ汁です。
 鳥取県は日本海でのカニ漁が盛んで、松葉ガニやベニズワイガニなど様々なカニが獲れます。かに汁にはズワイガニのメスの「親ガニ」をよく使います。漁師料理として作られたのが発祥とされています。
 カニが旬を迎える11月から1月に鳥取市や岩美町の漁港などで開催される各種イベントの看板メニューとしてかに汁は作られ、それを目当てに長い行列が出来ます。冬の日常的な家庭料理としても愛されており、鳥取県が誇る季節的なご当地汁です。

あごのやき

 アゴ(トビウオ)で作られるちくわ。別名「あごちくわ」ともいわれ、鳥取県の西部から島根県の一部にかけて作られています。
 初夏の暖かい季節に直火で作るこの料理は屋外で料理することが多いことから「野焼き(のやき)」と呼ばれるようになったといわれ、それが転じて「あごのやき」の名が付きました。
 現在は工場生産が一般的ですが、焼きの工程は職人による熟練の技術が必要です。

出雲そば

 そばの実を皮ごとひいて作られるそば粉を用いたそば。皮ごとひいて作られるため、一般的なそばと比べて色や香りが濃く、独特の味わいが特徴です。水で冷やしたそばを3段に重ねた割子(わりご=重箱)と言われる丸い漆器の器に盛り、薬味(ねぎ、刻みのり、かつお節、おろし大根など)をのせ、そばつゆをかけて食します。
 出雲地方の松江で、江戸時代から伝わる食べ方です。
 ゆでたそばをそのまま鍋から直に器に取り、ゆで汁、そばつゆ、薬味など加えて食べる「釜揚げ」も人気の食べ方です。

しじみ汁

 宍道湖で獲れるヤマトシジミを使った椀物。十分に砂抜きをしたシジミを火にかけあくを取り、すまし汁やみそ仕立てで食べます。
 宍道湖のヤマトシジミは、「宍道湖七珍(じんじこしっちん)」に数えられます。宍道湖七珍とは、昭和5年に松陽新聞(現・山陰中央新報)の記者が「宍道湖の十景七珍」という記事でシジミを含めた7つの魚介類を紹介したのがはじまりです。
 現在、宍道湖は日本全国のシジミ漁獲量の約三分の一を誇るシジミの名産地です。

ばらずし

 新鮮な海の幸と彩り豊かな旬の野菜を盛り合わせた郷土寿司です。「岡山ばらずし」や「まつりずし」とも呼ばれます。
 江戸時代、備前岡山藩の藩主池田光政が質素倹約を奨励し、「食膳は一汁一菜にせよ」との倹約令を布告しました。やむなく庶民たちは、たくさんの魚や野菜をまぜこんだ寿司飯を「一菜」とし、それに汁物を添えて、体裁を「一汁一菜」としたのが発祥です。
 倹約令をかいくぐるためにうまれたばらずしは現在、お祭りや祝いごと、接待などにおける料理として親しまれています。

ママカリずし

 酢と相性抜群のママカリを用いた寿司です。ママカリはニシン科の魚で正式名は「サッパ」といい、背が青い15cm程の小魚。ママカリという名は、隣の家に「ママ(ご飯)」を「カリ(借り)」に行くほど美味しくて食がすすむということに由来します。
 岡山県沖でママカリが多く水揚げされることから、寿司の他にも酢漬けや焼き物など、多くのママカリ料理が根付いています。
 現在も、お祝い事でママカリずしをたくさん作った際に近所へふるまうこともあります。岡山駅や倉敷駅などでは、駅弁としてママカリずしが販売されています。

カキの土手鍋

 みそを鍋の内側に土手のように塗り、その中でカキや豆腐、ハクサイやシュンギクなどの野菜を煮込んで食す郷土鍋です。みその土手を崩しながら、好みの味に調整する調理法は独特です。
 発祥は、行商人が考案したという説などがあります。広島県では、カキの養殖が室町時代から行われていたと伝わり、現在では全国一の生産量を誇っています。
 冬の郷土鍋として全国的に知られているカキの土手鍋は飲食店ではもちろん、家庭の食卓でも親しまれています。

あなご飯

 アナゴの頭と中骨、昆布でとった出汁にしょうゆを加えた汁で炊いたご飯に、アナゴの蒲焼をのせたもの。宮島を背景にひろがる大野瀬戸でとれるアナゴを風味豊かなに味わう名物料理です。
 瀬戸内海の漁師料理「あなごどんぶり」が発祥とされ、明治時代になって駅弁として売り出されたことで、山陽本線沿いから各地に広まりました。
 宮島観光の際に味わう名物料理であり、駅弁としても大変人気のある郷土料理です。

ふく料理

 山口県で「2500年以上前から食されてきた」と伝わるふく料理。県内では、幸福の「福」にかけて縁起をかついで、フグのことを「ふく」と呼びます。
 戦国時代、多くの武士がフグの毒にあたったことから、豊臣秀吉によってフグ食禁止令が出されました。そして明治時代、長年続く禁止令を解くように働きかけたのは、フグの美味しさに感動した、周防国(現在の山口県)出身の初代総理大臣の伊藤博文でした。
 下関市には「下関ふく連盟」が存在し、様々なイベントを通してふく料理を伝えています。

岩国寿司

 大きな木枠に酢飯を詰め、その上に岩国特産のれんこん、錦糸卵、しいたけなどで飾ります。同様に何層も重ね、ふたをして押し固める押し寿司です。一度に5升程の米を用いて作られ、食前にそれを切り分けて食します。
 発祥は、岩国藩主に命じられ考案された保存食という説や、藩主への献上品といった説などが存在し、別名「殿様寿司」とも呼ばれます。色鮮やかな見た目から祝いの席に喜ばれ、ひと昔前までは各家庭に専用の器が存在しました。
 現在でも地元のスーパーや観光客向けのご当地グルメとして、その味が受け継がれています。