ホームdancyu第5回薬膳dancyu第5回「五島列島・上五島のおいしい「薬膳と健康」の旅」

「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。

まずい薬膳、おいしい薬膳。

第五回

五島列島・上五島のおいしい「薬膳と健康」の旅

九州の最西端に浮かび、大小130もの島々からなる長崎県の五島列島。2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界文化遺産に登録され、注目を集めている。五島列島を大きく二つに分けた際の北部にあたる上五島の食をさらに輝かせるべく、和食薬膳協会代表理事を務める専門家・大東清美さんが指導。食材から見直し、郷土料理を薬膳に仕立てる。さまざまな信仰や文化が交差し、豊かな自然に囲まれるこの島の長期滞在の提案へとつなげる。


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上五島は“和・華・蘭文化”が交差する海のジャンクション

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五つの大きな島と、無数の小さな島からなる五島列島。大きく二つに分ける際、福江島、久賀島、奈留島を下五島、そして若松島、中通島、それ以北を上五島と呼ぶ。今回は、上五島の食と健康の旅を紹介していく。
上五島へのアクセスは船のみ。長崎港から奈良尾港へならジェットフォイルにて約1時間15分(フェリーで約2時間40分ほど)で到着。高速船で鯛ノ浦港へは約1時間30分。長崎港から80kmほどの距離ながら、雄大で美しい海の風景や、静かな祈りの場として守られてきた教会が点在しており、この島ならではのかけがえのない見どころに満ちている。


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250年におよぶキリシタン禁教令の厳しい弾圧を受けながらも、信者たちが浄財を捧げて造った教会は、上五島に29もある。2018年6月には五島列島内の複数のエリアが「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録されたなかでも、上五島においては頭ヶ島(かしらがしま)天主堂を含む集落がその構成資産となっている。


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全国でも珍しい石造りの教会で、キリシタンの迫害が終わって再び島へ戻り住んだ信者たちが、人目に付かない深い山に囲まれた地を選び、そこから切り出した砂岩を積み上げたものである。現教会堂は、1919(大正8)年に完成したもので、外観は重厚ながら、内部は花の装飾をあしらった優しい雰囲気の造りとなっており、現在も敬虔な信者たちがここで祈りを捧げている。

この島のことをもっと知るべく、政彦神社へと向かった。宮司の吉村政徳さんは、「上五島歴史と文化の会」の会長であり、執筆や講演活動でも定評がある人物である。


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吉村宮司が教えてくれたのは、こんな話だった。
新上五島町には、58の神社、13もの寺、29の教会(かつては集落ごとに51もの教会があった)があり、日本で最も宗教施設の密度が高い祈りの島であり、集落ごとにその棲み分けができているということ。
そして、歴史・文化的にも非常に重要な位置にある「“和・華・蘭(わ・か・らん)文化”が交差する海のジャンクション」といえる島であり、この島を経て長崎へと伝わりさらに文化が花開いたと説く。「和」とは、島に伝わる国の無形民俗文化財・五島神楽や神社の多彩性に表れる日本古来の文化のこと。「華」とは、精霊流しやペーロンというお盆に催される船漕ぎ競争などの中国伝来の風習。食文化においても、島の郷土料理・五島うどんのルーツが中国の「索麺(さくめん)」にあると指摘する。実際にその調査のために、浙江省永嘉県岩坦鎮まで趣き、五島うどんとまったく同じ製法で作られる現地の手延べ麺を視察してきた。それが遣唐使から伝わり、五島うどんが日本のうどんの発祥であると推測する。そして「蘭」とは、島に息づくカトリック教の信仰を指している。とても興味深い話に、島で食べる五島うどんも、町並みも、風景も、いっそう味わい深いものになる。


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