地方創生「連携・交流ひろば」 | 地方創生のノウハウ共有掲示板と実践事例紹介dancyu第1回薬膳dancyu第1回「世界が注目する日本の薬草酒」3ページ

「食と健康」で地方創生。日本の本物の食を伝えるdancyuが徹底取材。

まずい薬膳、おいしい薬膳。

第一回

世界が注目する「日本の薬草酒」

鹿児島の焼酎蔵元「佐多宗二商店」のアブサンづくり

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国内で初めて、自家栽培のニガヨモギで「アブサン」という薬草酒を造った蔵元があるという。しかもそこは芋焼酎の蔵元。その現場を追いかけるべく、鹿児島県頴娃町にある「佐多宗二商店」へ向かった。
「佐多宗二商店」は、“晴耕雨読(せいこううどく)” “不二才(ぶにせ)”といった人気焼酎を造る蔵元。伝統的な製法の焼酎を造りながらも、2006年には同敷地内に「赤屋根製造所」を設立。海外製の蒸留機を導入し、クラフトに徹底的にこだわったスピリッツを手がけている。フランスのコニャックや、ヨーロッパのフルーツブランデーの生産者に大きな影響を受ける佐多宗公社長が、若い蔵人の声を聞きながら取り組み、2018年11月に発売させたのが薬草酒「AKAYANE アブサン クスシキ 2018」である。本来は、スイスやフランスの一部で造られる酒で、ゴッホ、ピカソといった芸術家たちが魅入られた“魔性の酒”、なんて称されることもある。


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「やるなら、とことん手をかけて自分の蔵らしいものを造りたい」。それが、佐多社長の考えだ。「原料のニガヨモギのフレッシュが入手しづらいならば、育てればいい」と考え付くのは自然なことだった。蔵の前の土地にニガヨモギの苗を植え、完全無肥料・無農薬で栽培。摘んだばかりのものを芋焼酎ベースのスピリッツに浸漬し、蒸留する。


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佐多宗二商店の手がけるアブサンは、ニガヨモギやスターアニスのほかに、日本人の造るアブサンらしく、山椒、生姜、よもぎ、桜、梅、桜島小みかんなど、なんと39種ものボタニカルを使っている。


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蔵を訪ねた時は、さらにそこにスパイスを加えた特別バージョンを蒸留している真っ最中だった。高い窓から差し込む光を受け、薬草やハーブのエキスを凝縮するべく、ドイツのアーノルド・ホルスタイン社製の蒸留機が稼働する。物語の中に出てきそうな、魔女が釜で薬を煮出すシーンがちらりと頭に思い浮かぶ。蒸留機の小窓を覗くと、ほとばしる液体が見える。薬草のエキスがお酒になっていく様は実際のところ、ちょっと神々しくもある。


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できあがった薬草酒は、うすいグリーンの色味をおび、緑の森を感じさせる香りを放っている。そこに水を数滴たらすと、白濁するのがアブサンの特徴。度数の強さに対し、ほのかに甘く、飲み口がいいのが、“魔性の酒”といわれるゆえんかもしれない。


佐多社長は言う。「私たちの蔵は、 “角玉梅酒”という梅酒を鹿児島で初めて造った蔵でもあります。薬草酒の原点は、薬効のある実や植物を酒と合わせたものでそう難しいものではなかったと思います。ある意味、梅酒は薬草酒の原点ともいえるお酒なのではないでしょうか。そう考えると、僕たちが今アブサンを造るのは、そう不思議なことではないのです」。

日本の薬草や野草をお酒と絡めた視点から見つめ直す。古典的でいて斬新な切り口は、私たちにも、海外の人にも新鮮な驚きをもたらすだろう。

撮影・渡部健五 文・沼 由美子 


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Bar BenFiddich(ベンフィディック)
東京都 新宿区西新宿1-13-7 大和家ビル9階
  ☎03-6279-4223

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佐多宗二商店
鹿児島県南九州市頴娃町別府4910
☎0993-38-1121