地方創生「連携・交流ひろば」 | 地方創生のノウハウ共有掲示板と実践事例紹介日本全国 地域の宝 郷土食×地方創生食でかがやく「まち・ひと・しごと」秋田県大潟村『大潟村あきたこまち生産者協会』(3/4)

秋田県大潟村『大潟村あきたこまち生産者協会』

地元食材の「すっきり飲める甘酒」 2年で地域を代表する存在に

独自に切り開いてきた販路が販売の後押しに

大潟村は減反政策を乗り切るために、独自に販路開拓、6次産業化を進めてきた
そのノウハウと販路があるからこそ、新商品に乗り出せた

 こうして誕生した「大地の甘酒」を、早速、全国スーパーなどにネットワークのあるバイヤーに試飲してもらうと、涌井副社長の「こだわり」は、見事に当たり、採用が続々と決定していく。このバイヤーとのつながりが可能になったのは、大潟村あきたこまち生産者協会が培ってきた販路開拓の成果によるものである。

 大潟村あきたこまち生産者協会は、大潟村の「あきたこまち」生産者が、独自の事業を確立するために結成した共同組織だ。大潟村は、戦後、秋田県内に一大米生産拠点創設を目指し、琵琶湖に次ぐ面積を誇る八郎潟を干拓し、誕生した。だがその後、減反政策により米の生産量が制限されるが、創業者の涌井徹社長を中心とした生産者たちは、独自に生産した米の販路を開拓していく道を選ぶ。米粉など独自に加工品を開発、今でいう「6次産業化」を進めたり、商社を通さず直接海外に輸出したりするなど、先駆的な取り組みを行ってきた。

 昨今、生産者のあらたな事業化モデルとして、農産物を加工品にして販売する「6次産業化」は一般的になりつつあるが、課題になるのは、販路開拓だ。だが大潟村あきたこまち生産者協会は、すでにその販路を構築してきたメリットがあった。

 とはいえ、ハードルがなかったわけではないと、涌井副社長は振り返る。

 「この『大地の甘酒』は、すっきりとした味わいを残すために、あえて要冷蔵にしました。バイヤーからすれば、常温のほうが流通の手間もかからないし、正直売れるといってきました。でも、常温商品にするには殺菌を強めたり、酸味料を加えたりする必要があるため、私が苦手だった味に近くなる。それでは意味がない。味にも自信があったので、要冷蔵にこだわりました」

 起爆剤となったのは、会員制スーパー「コストコ」での導入と評価の高さだ。すっきりとした甘さが評価され、導入から1年を過ぎた今も売れ続けているという。

 こだわりは、見事に結果につながる。販路が拡大するだけでなく、販売した各所での売り上げが好調。2年を経て、むしろリピーターが着実に定着しているという。

 「ほとんどの販売現場では、先発の大手メーカーの人気商品と並んで陳列されています。値段も決して安くない。それでも、一度購入してくれたお客様が、もう一度買ってくれる。ネットのレビューには『甘酒は苦手だったけれど、これは飲める』と、私のように感じた人が商品を評価してくれました。自分の感覚にこだわって正解でした」